(正式名称:マンションの管理の適正化の推進に関する法律)
築40年を超えるマンションは令和元年末に91.8万戸。令和11年末には213.5万戸、令和21年末には384.5万戸に達すると言われています。
高経年マンションの増加が予想される中、マンションの適正な管理・円滑な再生を図るために令和2年6月に適正化法の大幅な改正が行われました。連動して建替法(正式名称:マンションの建替え等の円滑化に関する法律)の改正も行われています
【適正化法改正の趣旨】
(1)国の役割強化 「マンション管理適正化推進方針」の策定
(2)地方公共団体の役割強化
・国の方針に基づく「マンション管理適正化推進計画」の策定
・管理実態の把握(管理不全マンションの認定)
・管理不全マンションへの助言・指導・勧告
・適正管理のための仕組みづくり
・管理組合の策定する「管理計画」の認定
(3)管理組合の責務の強化
・改正第5条に「管理組合はマンションを適正に管理するよう『自ら』努めなければならない」と明記されました。
・管理組合が「管理計画」を策定し、行政が認定
・管理状況届出制度のある地域では、行政に届出を
・管理組合による管理の適正化と再生の円滑化の一体的な対応
(管理不全マンションを増やさないのが「管理」減らすのが「再生」)
・適正に管理し、良好な状態を自ら維持する
・維持が難しいなら、再生を選択し自ら除却(敷地売却・建替え)する
※建替法改正により、要除却認定が申請可能なマンションを五類型に増加させた
①耐震性 ②火災に対する安全性 ③外壁落下の危険性
④旧排水管の損傷等による衛生面 ⑤バリアフリー性能
★「お金がないから適正管理できない」「合意形成が整わないから適正管理できない」という言い訳はこれから通用しなくなる。
(4)区分所有者の責務の強化
・改正第5条に「区分所有者は「管理組合の一員」としての役割を適切に果たすよう努めなければならない」と明記されました。
【改めて管理組合は何のためにあるのか考えてみよう】
※管理組合は共用物について「所有者責任」を果たすための団体である
・他の区分所有者(共有者)に対する責任(費用負担等)
・周囲の第三者に対する責任(工作物責任)
・適正管理義務(公に対する責任)
【適正管理をしないとどうなるか】
〇適正化法は『適正管理されないマンションは公共の迷惑』という発想に基づく。
(1)第三者から工作物責任を追及され損害賠償を求められる。過失致死傷で刑事告発される場合もある。その際、理事長は「管理者」であるから、業務上過失致死傷罪に問われる可能性もある。⇒逗子市の例
(2)相続放棄され不良ストックを後世に残すこととなる。
(3)巨大な廃墟を残し、解体費用を納税者に負担させることとなる⇒滋賀県野洲市の例
【改正第五条に『管理組合が自ら』と記載されている意味】
(1)適正管理で重要なのは ①管理組合の適正な運営 ②適正な修繕工事(工事の実施時期、内容、費用)
(2)区分所有者の管理そのものへの無関心(総会出席率低下など)
(3)区分所有者の団体運営への無関心
(4)コスト感覚のなさ
(5)お金がなくて適正管理が出来ない、あるいは、合意形成が整わないので適正管理が出来ない。⇒不良ストックへの道を一直線
(6)管理の主体は管理組合であり、その構成員である区分所有者であるはず⇒修繕工事の実施時期・内容・価格を管理組合が認識できているか
【新時代の管理について】
(1)法文上は「努力義務」との体裁となっているが、管理組合・区分所有者の責務は強化されつつあり、意識としては、法的責任を伴う「法的義務」としての認識を持つ必要がある。
(2)マンション所有者の管理責任は、一戸建て所有者の何倍も重い⇒一戸建て住宅には「適正化法」はない。
(3)マンションの管理について、管理組合・区分所有者の自己責任・自助努力がこれまで以上に求められる
(4)マンションは「管理を買え」と言われますが、真の意味で「管理」が市場評価される時代が目前に迫っています。